一年中ここち良い暮らし
一年中ここち良い暮らし 開口部は、居住快適性と省エネルギー性の両立を図るうえで最も弱点となりやすい個所です。
しかし、その一方で冬期の日射熱の取り込み、夏期の通風や夜間放射による冷却効果などがあげられます。
一年中ここち良い暮らしのためにガラス・サッシを一緒に考えましょう。
[1]サッシ・ガラスの種類と特徴
サッシの種類と特徴
サッシに用いる材質としてはアルミ製、樹脂製、木製の3種類が一般的。ただし、枠や戸の框部分の防露性を考慮すると、熱伝導率が大きいアルミ製には難があります。最近になって「アルミ熱遮断構造」「アルミ・樹脂複合構造」といった、ハイブリッド材質のものが加わり、製品のラインナップが一気に多様化してきています。
これらはいずれも屋外側に耐久性、耐候性や清掃性に利点をもつアルミを用い、室内側に熱伝導率が小さく、断熱・防露性に優れる樹脂や木を併用することによって、それぞれの利点を併せもっています。
ガラスの種類と特徴
ガラスの部分に断熱性をもたせるには、二重に配置して中空層を設けることです。さらに断熱性を高める方法としては、
(1)中空層の幅を広げる
(2)中空層の数を増やす(3重ガラスにして中空層2層)
(3)中空層に面するガラス面に低放射コートを施す(いわゆるLowーE、ロウイー)
(4)中空層にアルゴンなどの不活性ガスを置換・充填する
ガラスの種類と特徴などの方法があります。
北海道や東北北部などの寒冷地では、樹脂サッシと(3)または(4)の併用ガラスの組合せが、また本州中部以南では、ハイブリッド材質製サッシと(1)のガラスの組み合せが主流となりつつあります。
なお、ガラスとガラスの間にスペーサーを配し、真空層を形成した「真空複層ガラス」も登場してきています。これは、ほぼ単板ガラス並みの厚さで高い断熱性能が得られます。窓の断熱性能は、サッシ部分の性能とガラス部分の性能の総合評価によって決まるといえます。
[2]開口部の日射遮蔽と対策
「躯体と開口部の断熱・気密性を高める」という意識は近年高まっていますが、断熱・気密性を高めた場合、開口部の日射対策を怠ると夏期の冷房負荷が著しく高くなったり、春・秋などの中間期の晴天日に窓を閉めきった状態で放置するとオーバーヒート現象が生じる恐れがあります。その対策として日射遮蔽と通風に関わる措置が必要になります。
開口部の日射遮蔽と対策
日射遮蔽の手段としては、
(1)開口面積の大部分を占めるガラスに遮蔽性能を持たせる
(2)窓の内側か外側に部材を併用する
(3)建物の軒や庇の出寸法を考慮する
(4)藤棚や樹木などの配置
などの方法があります。
(1)の具体例としては、高性能な低放射(Low-E、ロウイー)ガラスを使用するということ。ここで注意しなければならないことは、夏期の長所が冬期には短所となる場合があるということです。遮蔽性能が高いということは冬期の日射取得を妨げることになるからです。
また、特殊金属膜の低放射コートを施した面の違いによって日射侵入率の違いがあります。使用する方位を間違えると日射取得が減少して暖房負荷が増加するということになってしまいます。
(2)の窓の内側にブラインド、カーテンや障子を設置する方法は従来から用いられてきた方法です。しかし、これらの方法はいったんガラス面の内側に熱を取り入れてしまうので、断熱・気密化を施した建物における日射方位(北東・南・北西)用の対策としては不十分であるといえます。日射方位(南東・南・南西)には、窓の外側への部材併用が理想的です。具体的には、庇や外付けブラインド、すだれなどの日射遮蔽部材で日射の侵入を防ぎます。庇は、太陽高度が高い南面への設置、外付けブラインドやすだれ、オーニングのように壁面に付加するタイプの遮蔽部材は、太陽高度の低い東西面への設置が効果的です。
[3]通風をデザインする
通風の目的は、熱気の排出(室温上昇の抑制)と建物内を抜ける気流による涼感を得ることにあります。
日本のような亜熱帯の国では夏の時期はかなりの暑さになります。その暑さをエアコンで処理するようになってしまっていますが、本当にそれで良いのでしょうか。昔風に通風がきちんと取れるプランニングをしないで、できなかった部分を機械でカバーしてしまうのは考えものです。
プランをきちんとつくれば、夏の恒常風を取り込んで夏でも風がよく通る家をつくることは可能です。風さえ通れば高温多湿の多湿の部分がかなりカバーできるので、日本の夏でも過ごしやすくなるはずです。通風をデザインする
通風計画を行う際には、風の入口と出口を結んだ経路をイメージして開口位置を設定する必要があります。隅角部の部屋などは異なる二面に開口を設けることで、風の入口と出口を確保できます。外壁面が一面しかない部屋は、部屋の窓から室内の開口、隣接する空間の窓まで通じる経路を設定します。
周辺が開けた敷地では特に、風上側に風の入口となる開口部を設けることが有効です。さらに、通風の経路を想定するとき、平面だけではなく上下方向の経路を想定すると、より効果的に通風を利用できます。
上下方向の経路は、傾斜屋根を持つ空間や階段室などの吹抜け空間を利用するなどの方法があります。
一方、密集地の場合は風向きの予測が難しく、風速も低下するため、開口部の向きより開口面積の確保が重要となります。その際、住宅密集地では防犯性に注意したいものです。対策には、開口部への面格子、通風用のシャッターの設置や、連窓の小窓などがあげられます。低層部の開口には、特に防犯に配慮しつつ開口面積を確保する工夫が重要となります。
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