住まいは誰のもの?

住まいは誰のもの?

皆さんのお住まいは、誰のものですか?
所有権がどうのこうのという意味ではなく、誰に焦点を当てて建てるものですか?建てられたものですか?という意味での質問です。
通常、家族みなさんのライフスタイルや好みなどを集約して、プランニングするものであって、特に誰にフォーカスを当てるということはないでしょう。しかし、私のように車いすなどを使用する身体障がい者や高齢の方が、仮に家族の中にいた場合、その当事者にフォーカスを当ててプランニングされることがほとんどです。
ここでは、弊社のバリアフリー住宅づくりにおいて大切にしている「ミタス」の考え方から、車いすユーザーがいらっしゃる場合に有効な、いくつかの工夫ポイントをご紹介します。

1.玄関は別の方が良い?

通常、住宅には玄関は一つだと思います。しかし、車いすユーザー専用の玄関を作るのも一つの選択肢です。理由としては2つあります。

1 つは、スペースの問題です。
玄関に段差解消機やスロープを設置しようとすると、上がり框の高さにもよりますが、かなりのスペースを必要とします。仮に上がり框が20cmの場合、バリアフリー新法の基準、1/12の勾配を満たそうとすると、2.4mもの長さのスロープが必要になります。

2 つ目は、靴の収納です。
玄関には通常、靴が並んでいると思いますが、車いすの行く手を阻む障害物の一つになりえるので、車いすの動線上に、靴などを置いておけません。前かがみになり、一つずつ靴を移動させながら進む必要がある為、靴などが散乱した状態の中、車いすで通行することは非常に困難になります。つまり、常に収納しておかなくてはならないのです。

以上の事から、車いすユーザー専用の玄関をつくることで、別のスペースは必要になりますが、無駄に広い玄関をつくることと、靴を収納しておかなくてはならないという2つの問題を解決できるのです。

2.バリアフリー対応商品群以外からのチョイス

「バリアフリー」、「車いす」、と聞くと、ほとんどの場合、各住宅設備メーカーが出しているバリアフリー対応商品のパンフレットの中から、トイレや洗面台、キッチンなどを選ぶことが多いと思います。
しかし、これらの商品は、標準的な車いすを基準に、床面からの高さなどを決めて設計されたものである為、健常者が使おうとすると、使い勝手が悪い場合があります。
例えば、一般的なキッチンのカウンターの高さは85cmに設定されているのに対し、車いす対応商品では75cmになっていますので、健常者にとっては低すぎてしまいます。80cmというように間をとれば良いのでは・・・という意見がでると思いますが、その選択肢はあまりオススメできません。

トイレも同様に、一般的なトイレの座面の高さは40cm程度で、車いす対応では45cm程度になっています。また、車いす対応商品の場合、機能面に重点を置いている為、好みのデザインがなかったり、メーカー側もこの手の商品を量産していない為に、価格が高くなってしまいます。ほとんどの場合、前述のように障害当事者によったプランニングになってしまうと思いますが、ミタスの考え方では、使用頻度やライフスタイルに合わせて、どちら側によるかを決めていきます。

3.健常者側に歩み寄る

私の自宅のキッチンカウンターの高さは85cmです。私は特に身長が高いわけでもないので、使用頻度の高い健常者側の使い勝手に合わせる為、一般的な車いすに比べて座面が少し高い車いすをチョイスしているのです。これは、座面に敷くクッションを高くすることでも対応できると思います。全て障害当事者に合わせるのではなく、健常者側に歩み寄った方が良い事例の一つだと考えます。

トイレについては座面の高さを45cmにする為に、台座のようなものを履かせることで、デザイン性の高い商品から選ぶこともできます。
一般的な商品でも、ちょっとした工夫で車いすユーザーに対応できるのです。

“障害者=バリアフリー” “車いす=バリアフリー” というような公式に当てはめる住まい計画ではなく、柔軟な発想で、そこに住まう「みんなが笑顔で、たのしく暮らせる、すまい」になるよう導いていくことが求められるのではないでしょうか。

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